外壁塗装において下塗りは重要。
あなたが希望する上塗りを直に塗っていくという事は、ほぼありません。
塗装面に最適な下塗り塗料を塗った後に中塗り、上塗りと塗り重ねて仕上げます。
わたしはこれまで300棟以上の建物の外壁塗装をおこなってきました。
そのなかで多くの下塗り塗料を使用してきたので下塗りの大切さを身をもって体験しています。
ひとことに「下塗り」といいますが、塗装する下地によって下塗りの種類があります。
そのため、塗装する下地を見極め、適切な下塗りを選ぶ知識が必要。
この記事では外壁塗装でよく使われる「下塗り塗料」に関するプロの知識をあなただけにお伝えしています。
一戸建て外壁塗装における下塗りの重要性
下塗りの必要がない塗料もあるのですが、多くの塗装工程には下塗りが含まれます。
一般の方には、下塗りという概念がない方が多く、塗装面にいきなり上塗り塗料を塗られる方をお見かけする事があります。
下塗りの工程を省いてしまうと、キレイに仕上がらなかったり、後で塗料がはがれてくるトラブルになったりするので「下塗り」は塗装作業の中で重要な工程。
下塗りのとくに重要な役割は次の3つ
- 下地と上塗りの密着性を高める
- 上塗りが下地に吸い込まれるのを防ぐ
- ザラツキをおさえ、塗装面の手触りをよくする
これらの下塗りの役割を順番に解説していきます。
下塗りと上塗りの密着性を高める
わたしが多くの建物をみてきた中で、下塗りの役割でとくに重要だとかんじる事は「上塗りとの密着性」
わたしが塗装工事でおとずれた建物の鉄部や木部の塗膜がひどくはがれている状態になっている事があります。
こういったひどい状態になっている原因は下塗りにある事がほとんど。
下塗りの工程をはぶいた手抜き工事のせいで、下地と上塗りの密着が悪いせいで、短い期間で塗料が浮いてきてしまうのです。
下塗りと上塗りの色は違うので、はがれた塗膜をみればすぐに下塗りが塗られていない事がわかります。
上塗りが下地に吸い込まれるのを防ぐ
「吸い込まれる」というのは、塗料が下地にしみ込んでいく状態。
スポンジを塗装面、水を塗料とたとえるとわかりやすいのではないでしょうか?
スポンジに上から水をたらしても、表面にのこる水分はわずかで、ほとんどスポンジに吸収(吸い込まれる)されてしまいます。
吸い込みやすい下地の場合には上塗りより粒子の大きい下塗り塗料を先に塗ることで「吸い込み」を防ぎ、上塗が仕上げやすくなるのです。
ザラツキをおさえて、塗装面の手触りをよくする
現在の住宅の外部は手で触るようなところは、すべてアルミ製なので塗装することは、あまりありません。
しかしひと昔まえの住宅ではベランダの手すりが鉄製だったりしたので、下塗りのさび止めを塗装する事がよくありました。
上塗りを塗る前に、ザラツキをおさえるため乾いた下塗りにサンドペーパーをかけます。
下塗り塗料は多くの場合上塗り塗料よりペーパーがかけやすいので、ツルっとした塗装面をつくるのに下塗りは重要な役割をはたします。
ザラツキは室内の塗装では、特に気を使います。
一戸建ての外壁塗装でよく使われる下塗りの種類
- フィーラー、微弾性フィーラー
- シーラー、プライマー
- さび止め塗料
- 木部下塗り塗料
住宅の外壁塗装で使用される下塗りは大きくわけて主に上の4種類。
それぞれの下塗りの解説にあわせて「どこで、どの下塗りが使用されるのか?」という下塗りの使用シーンについてもお伝えしていきます。
フィーラー、微弾性フィーラー
フィーラー、微弾性フィーラーは主に外壁に使用される下塗り。この2種類の下塗りの違いは塗膜の弾力性。
フィーラー
外壁がALC(へーベル)の下塗りによく使用されるのがフィーラー。
通気性を保ちたい場合やひび割れの心配がない外壁などの下塗りに向いています。
ALCの一般の住宅棟数が少ないため、外壁塗装でフィーラーが使われることは、あまりありません。
・ALCとは
気泡の入ったコンクリートの一種。軽量で耐火性、防音性、断熱性、遮音性に優れている建材。ALCは水分を吸収しやすいので、防水のための塗装が必要。
微弾性フィーラー
モルタルの外壁の下塗りとして、よく塗装されるのが「微弾性フィーラー」
モルタルの外壁はクラック(ひび割れ)が起こりやすいので、ゴム質の下塗りを塗装してクラックの発生にに対処します。
多くの一般住宅の外壁の下塗りとして「微弾性フィーラー」が使用されています。
外壁の下地の色によっては下塗りがムラに見えることがあります。
シーラー、プライマー
シーラー、プライマーは一般的には明確な違いの定義はありません。
しかし、わたし自信の中では定義化されているので、そちらをお伝えします。
どちらの下塗りも使用用途は似通っているので、一般の方は同じ下塗り塗料と理解していただいて問題はありません。
シーラー
外壁、屋根、ベランダの床などで使われる下塗り塗料が「シーラー」
塗料の色は透明や乳白色、白色など。塗料の粘度がひくいためにサラサラした塗料であることが多いです。
シーラーを下塗りする目的は、下地と上塗りの密着性を高めるためだけでなく、下地を強化する目的でも使用されます。
浸透性シーラーという下塗り材は、名前のとおり塗装面に浸透していくので、乾くと塗装面の下地が強化されます。
ひと昔まえは一般住宅のモルタル外壁にもシーラーを使用して、上塗りに弾性塗料を塗っていたのですが、現在モルタル外壁にシーラーがつかわれることはあまりありません。
サイディングの建物でシーラーを下塗りにつかう外壁塗装は、みかける事があります。
プライマー
プライマーとは、ちょっと特殊な下地を上塗りの接着剤というのが、わたしの認識であり定義になります。
通常ステンレスやアルミは、劣化しづらくと塗料が密着しづらい素材なので塗装する事はありません。
しかし、こういったものも塗装した方がいいような状況がまれにあります。
そういった場合に下塗りに使用するのが「プライマー」
ほとんどのプライマーは強溶剤で、匂いがキツイものが多いです。水性の2液型プライマーも発売されています。
あくまで、わたしのプライマーに対する認識なので、一般的な定義ではありません。
さび止め塗料
さび止め塗料も「防さびプライマー」という位置づけの下塗り塗料。
サビを防ぐだけでなく、上塗りとの密着性を高めます。鉄部の下塗りにつかわれます。
一般住宅で「さび止め塗料」がつかわれる場所は「霧よけ、トタン屋根、雨どいの金物、建物についている、サビがでている金物(ガスの配管のサポート金具など)
築年数の古い建物の方がさび止めの使用料が多い傾向。
古めの住宅ではベランダの手すり、トタン屋根など鉄部が多い建物が多いからです。
木部下塗り塗料
塗装されていない木は塗料の吸い込みやすいので、粒子の大きい下塗り塗料を塗って上塗り塗料の吸い込みをおさえます。
古い住宅では破風やサッシなどが木製であることが多いです。
木部は痛みやすいので旧塗膜がはがれて、下地がむき出しになっている事があります。
こういった場合に木部下塗り塗料は活躍します。状況によっては2回以上、下塗りを塗装します。
外壁塗装で下塗り塗料が使われるシーン
外壁塗装で実際に下塗りが使われる状況をお伝えします。
外壁の下塗り工程
モルタル壁の場合によく使用される下塗りが微弾性フィーラー。
モルタル壁はヒビが入りやすいので弾性系の下塗りが向いています。
- 高圧洗浄で外壁のよごれをしっかりおとす
- 養生
- 外壁下塗り
- 外壁の中塗り、上塗り
下塗りをするまえに外壁のよごれを落として塗料の密着をよくします。
基本は3回塗り!? 外壁塗装は3回塗りが基本!?注意!2回しか塗らない業者もいる!!
鉄部の下塗り工程
鉄部の下塗りはさび止め効果のある塗料を使用します。下塗りまえに、旧塗膜のはがれをしっかりおとし、全体的にペーパーなどで塗装面にキズをつけます。
この作業を「ケレン」といいます。
- 塗装面のケレン清掃
- 下塗り(さび止め)
- 中塗り、上塗り
塗装面のサビがひどい場合、下塗りは2回以上塗る。
木部の下塗り工程
最近は少なくなりましたが、破風やサッシが木製の建物もあります。
外壁塗装で痛んだ木部を塗装で仕上げるのは手間がかかります。木部というのは木でできた塗装部分。
木部は塗膜がはがれている事が多いので、塗料が吸い込みやすくなっています。
塗膜がはがれている下地の場合下塗りは1度塗りだけでなく、場合によっては2回以上、下塗りを塗って塗料の吸い込みをおさえておきます。
- 塗装面のケレン清掃
- 下塗り(木部専用の下塗り)
- 中塗り、上塗り
下塗りの段階で塗装面の吸い込みをおさえておく事がポイント。
下塗りの後は中塗り、上塗り
塗装面の下地処理をして下塗りが終わって乾燥すると、次に中塗り、上塗りと仕上げていくのが通常の塗装工程。
のなかで使用される上塗り塗料も、塗装面に応じて、さまざまな種類の塗料があります。
各種塗料については、下の記事に詳しくまとめてあるので、あわせてごらんください。
まとめ:外壁塗装で下塗りは重要な役割をはたしていた!
外壁塗装において下塗りが大切な役割を担っているのは、おわかりいただけたでしょうか?
下塗りがいらない塗料も発売されていますが、多くの塗装工程には下塗りがつきもの。
下地と上塗りとの密着性を高めたり、塗料の吸い込みをおさえたりと下塗りをする事には、ちゃんとした意味があります。
外壁塗装でつかわれる主な下塗りの種類は下のとおり
- フィーラー、微弾性フィーラー
- シーラー、プライマー
- さび止め塗料
- 木部下塗り塗料
下塗りまえには、塗装面の高圧洗浄やケレンなど下準備がかならず必要です。
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